牟礼剣道スポーツ少年団団長
剣道 教士七段 松岡善彦
剣道は、剣の理法の修練による人間形成が目的です。
「相手と対峙し、竹刀で打ち合うことがどうして人間形成になるのか。」という、素朴な疑問が湧いてくることと思いますが、剣の理法は「日本の武士が剣(日本刀)を使った戦いを通じて『自得』してきたものである」とし、同時に、その自得のために修練し、さらに理法の奥にある武士の精神を学んで「人間形成の道」を歩むということです。即ち剣の修行によって切り開かれた最終境地を、自らの人間形成の最終目的とするところにあります。
オリンピックをはじめ各種の世界および全国大会または地域の大会等におきましては、勝つことが義務付けられ、選手は大変なプレッシャーのもと競技し、その真剣な姿には感動を覚えます。しかし、勝つためには反則も厭わずという「礼節」「信義」「誠実さ」「人を敬う心」を疎かにした場面も時たま見受けられることもありまして、「剣道は単なる運動競技種目ではなく『武道』である。」とする我々剣道家にとりましては、理解できない事が多少存在し、「スポーツ」と「武道」の違いを改めて認識させられております。
剣道では、「機会を捉えて初太刀を打ち切る。」ことにあり、「みずから積極的な行動を起こし、チャンスを作り出して『その一瞬の機を捉えて』失敗を恐れず万心を捨てて一心不乱に打ち込み、またその結果を油断なく見守りながら、『残心』をとる。」ということが求められます。また礼節を尊びお互いを敬う心も身に付けて「交剣知愛」の輪を広げて行く文化的な要素も兼ね備えています。これは人間として最も基礎的な生き方でありまして、日々の厳しい稽古を通してしっかり学んでいただきたいところです。
牟礼剣道スポーツ少年団では、現在15人の少年・少女の剣士たちが、心と技を磨き健康な身体をつくるため、稽古に一生懸命取り組んでいます。
指導者として、子ども達には「芽を摘むな、芽を踏むな、水を与えよ」という意識を持って当たり、「やり始めたことは最後までやり遂げる努力の習慣」を小さい時から身に付けさせながら、心豊かな人間の育成に努めて行きたいと考えております。